ライトノベル『カウンタアタック! 特撮学園のCGさん』 ‐プロローグ‐

『カウンタアタック! 特撮学園のCGさん』 ‐プロローグ‐
     作:南瓜汁したたり
     イラスト:チョコの人


 閃光――爆発する校舎。
 モーレツな爆風に押し飛ばされる私。
 「(キ―――ン)」と耳鳴りが頭に響き、一瞬真っ暗になった視界が光を取り戻し始めた。
 ぼやけたピントが合い始めると、悪ノリした遊園地の回転ティーカップのように、世界が高速でぐるぐる回っている。
 ……いや、私が宙を舞っている!
 「ぎ、ぎゃああああああああああああああ!」
 私はようやく自分の状況を把握した。
 体育館の屋根らしき物体をかなり下のほうに視認できたという事は、自分と地面との距離は少なく見積もっても30m以上はあるだろう。
 私は全くもって普通の能力の人間……というか、運動神経等を考慮すると、普通以下の女子高生である。
 状況を察するに、私は残念ながら、あと数秒で墜落し、ピンクの物体と化すだろう。
 人は、死に直面すると走馬灯のように過去の体験が脳裏を過るという。
 「嗚呼……、ヒカル……トシヒコ……ノリオ……」
 落下による加速の中でいま私が見ているのは、今まで攻略してきた乙女ゲームのイケメンたち(主に歴史系)である。先ほど『普通以下の女子高生』と述べたが、この辺りも普通以下であった。しかし自分が残念な人だとは決して思わない。とっても幸せな思い出たちなのだから。
 「マサトモ マサトモ コウフクダッタネ」
 私を奪っていった美しい男たちへ最期のテレパシーを送り(私にそんな能力はない)、胸で手を組み、目を瞑る。
 「(嗚呼、推し声優が来月出すという謎ジャンルCD『壁ドン!SONG♪』、聞いてみたかった……)」
 そう思うと涙があふれ、その滴はキラキラと風圧に運ばれて行くのであった。
 「身構えて!」
 「え?」
 衝撃。
 「(ザッパ――――――ン!)」
 墜落の直前、何者かに体当たりをされ、体育館横のプールに着水したらしい。
 「ガボ!グベバボババ……!!」
 そう、私は泳げない。普通以下なので、当然だ。
 あまりのことに混乱している私の口と鼻の中に、塩素の匂いが充満する。鼻の奥と、気管、肺が熱い!痛い!苦しい……!
 激しく揺らめく水面の光が、暗くなってゆく……

     ◆

 やわらかく、あたたかいものが、私の唇を覆う。
 「……んっ……」
 とろける感触がぬるりと舌に絡み、熱い水蒸気が顔を撫ぜる。
 甘い匂い。
 真っ暗だった視界が明るくなるにつれ、目の前に影のようなものが見えてきた。
 私の唇を覆う気持ちいいものは、つぅと糸を引いて距離をとった。
 その影はやがて、人の顔であることを伝え始めた。
 水に濡れ、逆光にきらめく長髪は青白く、同じ人間のものとは思えない美しさ。
 私の身体を真剣に見つめる茶色く透き通った大きな瞳と、くるりと長いまつ毛は愛おしく、日本人でないことを語る。
 着ているのは4月だというのに夏服。同じ学校のものだ。私をプールから助けあげてくれたのだろう、びしょぬれで下着が透けてしまっている。
 水の滴る可憐な少女は、私達とは別次元の存在のような、触れたら壊れてしまうような神秘性を宿していた。
 ぷりっとかわいいピンクの唇がすうっと息を吸い込み、きゅっと力むと、私を目がけて迫ってきた。
 「え!いやいやいやちょっとまっ……んっ―――!!」
 可憐な少女は、触れたら壊れてしまいそうな印象からは想像つかない超怪力と、舌が抜かれると思わんばかりの壮絶な吸引力をもって、私の唇を奪った。
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 「ん、ん―――! ……ん? んぐ、ご、ぐぼぉおおおえええええええ!!!!」
 私の肺の中から、胃の中から、信じられない量のプールの水が湧き上がってきた。
 「ゲホ!ガホ!ケホケホ……」
 口から鼻から塩素水を、逆光の中キラキラと、びちゃびちゃと出し切り、地面まで伸びたよだれと鼻水を拭って息を整えると、ホッとしたやら情けないやら、なんだか色んな感情が沸いて泣けてきた。
 「う、うぇえ……」
 「大丈夫。もう大丈夫だから」
 外国人にしか見えない少女は、流暢な日本語でそう言いながら、私をきゅっと抱きしめた。少女の華奢でやわらかな身体は、びしょぬれで冷やりとした感触の奥にある、確かな熱を伝えてきた。
 あたたかい。
 「ぅえ?……あ……ありがろうごらいまひゅ……。れ、でも……ふ、ファーストキスが……うぇえ……」
 「?」
 少女は、しょうもない事でだらしなく泣く私の顔を覗き込んでキョトンとすると、頬を赤らめ、恥ずかしそうに言った。
 「……私も初めてなの。うまく出来たかな?」
 「……ちょっと乱暴すぎかも……」
 「ふふ」
 「あはは」

 
 普通以下の私と人間離れした少女との出会いは、そんな感じで、吊り橋効果的なアレをもって固い友情へと発展していくことになるのだが――


 「ははは……!? い、痛たたたたたたた!!!!」
 「どど、どうしたの?」
 「折れてる! これ、折れてる! そりゃそうだよ、あんだけ落ちれば折れるよ!! い、痛っ……」
 「え? あら? 失神してる? いけない、救急車!」

     ◆

 あらゆる骨がバッキボキに折れてて、入院。
 あの爆発が何だったのか、私をプールまでふっ飛ばして助けてくれたのは何者なのか、そして、あの可憐な少女は何者なのか……。
 少女に名前を聞く前に失神してしまった私は、退院までの3ヶ月間、悶々と過ごすことになった。
 そして入院中は乙女ゲームが出来ないので、そういう意味でも悶々と過ごすことになるのであった……。


 「とりあえず、あの唇の感触をイケメン補正することから始めよう……」


 乙女に不可能の文字は、無い。



   つづく

テーマ : 自作小説
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