リクエスト小説 「疾風(はしれ)! メロスがこんなに変態王子で大勝利!」 ②

人はロリのみで生きるにあらず
ただロリとして生きるのみである
------ニー・ソクラテス


人がその人生の意味を見出すのは「いつ」か。
ともすれば、一生叶わぬかもしれないその真理にメロスが辿り着いたのは、10年前の事であった。
その頃のメロスは苦学生であった。母子家庭に育ち、貧しい中、母子二人で支えあって暮らしていた。
大学進学を熱望しながらも、生きる為に就職と言う道を選ぼうとしていた矢先、母の再婚が決まった。
相手は嘗(かつ)ての幼馴染(こうりゃくたいしょう)の子持ちバツイチ。
同窓会での再会がきっかけらしかった。
もう自分が母を守るべき存在ではないと確信していたメロスは、生きる目的を見失っていた。
両家の顔合わせの日。
誠実さと確かな力強さで差し出された義父の手を、ただ茫然と握り返したメロスの視界にそれは入り込んだ。
義父の足元、心細げにそのズボンの裾を掴む小さな手。
その手の持ち主の瞳が、じっとメロスを見つめる。
透き通るような肌。しっとりと艶のある唇。サラサラと日の光が微かに照らす髪。
促され言葉を発する。
「おにいちゃん?」
メロスの世界が色を増した。
ああ、私はこの子のために生きるのだ。この子を守る為に生きるのだ。
義妹(こうりゃくたいしょう)の誕生により、メロスはその人生の意味を悟った。
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その夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。六歳の義妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊(こんぱい)の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。
「なんでも無い。」無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえと私の結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
幼い義妹は頬をあからめた。
「うれしいか。綺麗(きれい)な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。兄妹の結婚式は、あすだと。」


ニヤリとメロスは笑った。
終電も終わり、徒歩での帰宅を余儀なくされたメロスは、その肉体的苦痛を緩和するために、ただひたすら妄想にふけった。家で幼な義妹(つま)が待っている、という明確な目的意識が両の脚を動かしたのだ。
しかし、実際に家では妹が友達を招いてお泊り会とやらをしている。正面から帰っても確実に罵詈雑言と共に追い返されるだろう。
しばし考えたメロスは、ご都合的な位置にある物置から2階へ、自分の部屋のベランダに飛び移る事にした。
その隣、妹の部屋からはもう明け方だと言うのに光が漏れている。慎重に行かなければならない。意を決してメロスは飛んだ。

メロスは、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、法の番人の元を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。法の番人は驚き、それはいけない、妹さんは肉体的な意味で仕度が出来ていない、せめて法律的に大丈夫になるまで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。法の番人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか六法全書をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。


どうにか自分の部屋に辿り着いたメロスは、そのままベッドに倒れ伏し、いつも通り某キャラの抱き枕の股間部分をビョゥと吸い込み、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
目が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐコレクションの整理に取り掛かった。それも物音を立てないよう慎重に。
まずは全年齢対象か成人向けかに分け、更に成人向けの中でも癖(へき)としてセーフかアウトかに分類してゆく。
これはセーフ。これはアウト。アウト。アウト。セーフ。アウト。アウト。アウト。アウト。アウ・・・セーフ?
山となったアウトを前に、若干メロスは冷静になった。果たしてお幾らガバスをこれにつぎ込んだのか、考えたくもない。
はっ、とメロスは我に返り作業を再開した。更にアウトが詰み上がる。やがて、全ての分類が終わった。どうやって処分するかはさて置き。
一息つくと、これで最後とメロスは机のサイドチェスト、上から2段目を慎重に開け中に入っていた様々な真面目な歴史書物を全て取り除くと、底板を裏から軽く押した。ズズっと底が上がる。が、そこには板・紙束・更に板。2重のカムフラージュが施されていた。
紙束は漫画である。手描きの漫画である。成人向けである。内容はこうだ。
血の繋がらない(容姿の見た目が)幼い義妹が、クラスメイト数人をパジャマパーティーと称して家に招いた。遊びの輪に加わった義兄の事を以前から狙っていたクラスメイト達は、様々な手で兄を誘惑。それに嫉妬したお義兄ちゃん大好きな義妹も含め、あれやこれや。
無論、作者はメロスである。これだけは確実に始末しなければならない。他の全てはどうにかなっても、これだけは確実に燃やし尽くさねばならない。この欲望無限盛りだけは。しかし、出来る事ならば出版してみたかった。シラケで売ってみたかった。
そう言えば妹も現在お泊り会とやらの真っ最中のはずだが、不自然な程に声がしない。まだまだ寝るような時間でもないし、あの年頃の女共が寄り合って静かでいられるわけがない。どうなっているのだろうか。
メロスは慣れた手つきで「聴診器」的な物を装着すると、円盤を壁に押し付けた。
・・・・・・・・・・・・・・男の声がした。

新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。

いつの間にか外は豪雨だ。しかしメロスはそんな事には気にも留めず、耳に流れてくる音にのみ集中した。

メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この幼い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの妄想に愚図愚図とどまっていたかった。

かつて自分が一生を賭して守ると決めた最愛の人が短く息を吐く音を聞く。荒々しい雄の息遣いを聞く。木製のベッドが短い悲鳴を繰り返しているのを聞く。

メロスほどの男(しんし)にも、やはり未練の情というものは在る。ああなってしまっても、やはり最愛の義妹でったのだ。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、スカ○ロと、それから、熟女だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。試したいプレイは正直に打ち明けあうがいい。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男(しんし)なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。


突然扉を開けて入ってきた下半身裸の兄の姿を見て、全裸の妹は何が起こったのかわからない顔している。

メロスは、それから花婿の肩をたたいて、「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と私のコレクションだけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」
花婿は揉(も)み手して、てれていた。


妹の上に覆いかぶさっている全裸の男も硬直している。おっと、大事な部分だけは神速で硬直が溶けた。

メロスは笑って会釈(えしゃく)して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

メロスは笑って会釈(えしゃく)して、妹の部屋から立ち去り、咲き乱れた白椿が花粉をまき散らす自室に戻り、死んだように深く眠った。

-続く-


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チョコの人追記
挿絵うp。六歳は幼すぎ。

テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

リクエスト小説 「疾風(はしれ)! メロスがこんなに変態王子で大勝利!」 ①

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、ロリオタニートである。親の脛をかじり、遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシラクスマーケット(略称シラケ)にやって来た。
メロスには父も、母も無い。海外出張中である。
十六の、リア充な妹と二人暮しだ。この妹は、学校の友達を家に招いてお泊り会をする事になっていた。
「マジ当分家にいないでくれる?」
メロスは、それゆえ、、お目当ての新刊やら、フィギュアやらを買いにはるばる市にやって来たのだ。

先ず、その品々を買い集め、それから企業ブースをぶらぶら歩いた。
メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。
今は此のシラケで、創作ロリ凌辱本を販売している。その友のブースを、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちにメロスは、会場の様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう開場から時間もたって、人が少なくなってきているのは当りまえだが、けれども、なんだか、壁サークルがペラいコピ本しか出さなかったせいばかりでは無く、会場全体が、やけに寂しい。
のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。
路で逢った老爺(パヤオ)に訪ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「王様は、児ポを規制します。」
「なぜ規制するのだ。」
「未成年への性犯罪を助長させるというのですが、誰もそんな非紳士的な行為はしませぬ。」
「たくさんの児ポを規制したのか。」
「はい、はじめは漫画を。それから、アニメを。それから、ラノベを。それから、ネットの画像検索を。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。ペドを、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の性癖をも、お疑いになり、少ししでも幼女に対して接近せねばならぬ場合には、貞操帯の着用命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人の紳士が殺されました。」
「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」
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メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは幼女が裸でアハンウフンする薄い本が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

「この同人誌で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以(もっ)て問いつめた。
その王の顔は蒼白(そうはく)で、眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
「医学的な興味本位です。」とメロスは悪びれずに答えた。
「え、何言ってるの?」王は、憫笑(びんしょう)した。
「仕方の無い変態じゃ。おまえには、わしの苦悩がわからぬ。」
「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の性癖を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、ペドの紳士性をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。ペドの心は、あてにならない。人間は、もともとエロスのかたまりさ。信じては、ならぬ。」
暴君は落着いて呟(つぶや)き、ほっと溜息(ためいき)をついた。
「わしだって、まともな性癖になったお前等が出生率が上げる事を望んでいるのだが。」
「なんの為の規制だ。自分の政治家生命を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。
「罪の無い人を殺して、何が出生率だ。」
「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、変態共の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(きっこうしばり)になってから、泣いて詫(わ)びたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬ覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、三日間の日限を与えて下さい。自分の部屋に隠したお宝グッズを処分したいのです。三日のうちに、私は親に遺品の整理をされても大丈夫なようにして、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄(しわが)れた声で低く笑った。
「とんでもない嘘(うそ)を言うわい。逃がしたペドが帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。秘蔵のコレクションが、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、このシラケにセリヌンティウスというロリ同人作家がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」

それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙(だま)された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りのペドを、三日目に殺してやるのも気味がいい。ペド野郎は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男の本で火をつけて火あぶりの刑に処してやるのだ。世の中の、変態と言う名の紳士とかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの性癖は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
メロスは口惜しく、地団駄(じだんだ)踏んだ。ものも言いたくなくなった。
竹馬の友、セリヌンティウスは、王城に召された。暴君ディオニスの面前で、佳(よ)き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

-続く-

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チョコの人追記
挿絵遅れたっす。

テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

ライトノベル『進撃の変態巨人王子と笑わない猫は茶羽根の』

と記しておけば、鷹尾が書いてくれると聞いて。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 本・雑誌

リクエスト小説 茶羽根荘のゴミ虫な彼氏

茶羽根荘のゴミ虫な彼氏


アケミは変わり果てた彼氏の姿を前に言葉を失った。
ぐねぐねもぞもぞと蠢く肢体。
ぬらぬらと光る肌。
嫌悪感に満ち満ちたソレは既に人ではなく、虫のソレであった。

どうしてこんなことになってしまったのだろう。
アケミは遠くなる意識の中でつぶやいた。



アケミの彼氏が上京したのは、丁度1年前の事だった。
専門学校で出会った2人であったが、地元で事務の仕事に就いたアケミとは対照的に、彼氏はどこにも就職の口が無く、最終的にかねてからの夢であった役者を目指し1人東京へと向かったのだ。
遠い地で孤独に頑張る彼氏へ、アケミはせっせと毎月の生活費を振り込むのを忘れなかった。
毎日の電話。小さな機械の向こう側で、彼氏はその日あった出来事を熱く語り、アケミはとても眩しい笑顔でそれを聞いた。
そんな幸せな日々であったが、やがて電話の回数は少なくなり、メールも途切れがちになり、そしてついに昨日「お客様のご都合によりお繋ぎできません」という簡素なアナウンスがスピーカーから流れた。

たまらずアケミは新宿行きの夜行バスに飛び乗ったのだ。

夢を叶えるまでは会わない。
そう固く誓ったはずであった。
彼氏の事は信じたい。

しかし1年と言う時間と、東京と言う場所は人を変えてしまうのには十分な環境だ。

窓の外の暗闇を見つめながら、以前読んだ漫画のモノローグをアケミは思い出していた。

「今日は××という劇団のワークショップに参加した」

「今日、○○というTVでも活躍している俳優に会った」

「次の公演でちょっとした役が貰えそうだ」


彼氏からのメールを読み返す。
そうだ、この頃はまだ情熱に満ちた言葉が踊っていた。
だが割り当てられたチケット販売のノルマをこなせず、自腹を切った挙句に借金を背負いかけた頃から彼氏は変わり始めたのではないだろうか。

「家賃が高いから少し離れた所に引っ越す」

「ボロいアパートだけど、何か地元に似てて落ち着く」

「アパートの人達が凄い親切にしてくれる」

「すげー懐かしいアニメを皆で一気に観た」

「俺が生まれる前のファミコンとかマジ面白い」

「親の脛は髄まで齧れ!」

「マジ名言!」

「最近、声優にも興味出てきた」

「オタクがキモいというお前の幻想を壊してやんよ」

「この不自由な現実<リアル>と戦う事が唯一の存在証明<リアリティ>だって思うんだ」



後半はもはや妄言に近い。
それでもアケミは増額した仕送りを続け、実家の母親と大分口論になった。
そうだ、自分は仕送りを増やしたはずだ。
それだけの額があれば、今までと同じだけの暮らしができると思うのだが、もちろんそんな事は口には出さない。
きっと東京では田舎暮らしでは想像もつかないような出費があるのだろう。
そう、例えば、女性に貢いでいる、なんて事もあるかもしれないのだ。

「最高だよ茶羽根荘は」

彼氏のメールを頼りに辿り着いたそこは、新宿から更に電車で1時間はかかるような場所だった。
東京都と聞くと、どこもかしこも観光地というイメージだったが、アケミの目の前に広がる光景は、まさしく地元臭。
ギリギリ自動改札っぽい機械があるホームを抜け、シャッター街と化した商店街風の通りを抜ける。
今日行くことは彼氏には伝えていない。
突然行って全てを確認するだけだ。
夢叶うまで会わないという約束もあるが、携帯の件を伝えれば正当な言い訳として納得してもらえるだろう。
もしも女の影があれば、それで自分は身を引くつもりだ。
そのつもりだが…。

駅から歩く事15分。
田んぼと畑に囲まれた土地に、『茶羽根荘』と明朝体でプリントされた紙が貼られた門柱。
建物はまさしく古き良き木造アパート。昭和だ。
むしろお洒落、と心の中でアケミは呟いた。本心でだ。

集合玄関は薄暗く、蒸し暑かった。
本来ならばこの土間で靴を脱がなければいけないのだろうが、既に無法地帯と化しているらしく、明らかに靴の跡が建屋内に点々と続いてる。
管理人室とおぼしき玄関脇の小部屋にも人影はない。
アケミは心の中で「アメリカンナイズされててむしろお洒落」と思いながら最初の一歩を踏み出した。

ギシ
ギシ
ギシ


木造の床はアケミの豊満な体重を支えて悲鳴をあげた。
彼氏の部屋は幸いにも1階だ。
このボロボロの階段を登らずに済んで良かった、とアケミは思った。

どこかの部屋からピコピコと電子音が聞こえる。
どこかの部屋から人の話し声?が聞こえる。
どこかの部屋から妙な臭いが漂っている。

蒸し暑い。

彼氏の部屋は廊下の一番奥だ。
そっと扉に顔を近づけ、中の音を伺う。
物音はしない。
目を瞑り、更に意識を集中させる。
微かにモーターの様な音が聞こえるが、これは冷蔵庫か何かだろうか。
平日の真昼間だ。彼氏はきっとバイトか何かで留守にしているに違いない。
そうでなければまだ寝ているのか。

アケミは再び玄関に戻ると、今度はコソコソと建物の裏手へ回った。
体勢を低くしながら、広めだが全く手入れされていない雑草だらけの裏庭を行く。
幸いにも誰にも見られてはいない。
彼氏の部屋の窓。
幸い擦りガラスではないので中は覗けるが、カーテンがひかれている。
どこか覗ける場所は、とアケミを目をやると、2枚のカーテンの中央部が若干空いているのを発見した。
最後に周囲を確認したアケミは、そっと窓に顔を近づけた。

部屋の中は薄暗い、が、まだ昼間と言う事もあり、どこかから明かりが入っているのだろうか、中の様子はどうにか確認する事ができる。
真正面に、誰かが寝ている。
彼氏か、いや、女、か。
物の無い部屋。中央はきっと布団だろう。
そこに、誰か見知らぬ女が寝ている。
しかも、あられもない格好で。

覚悟していたにも拘らず、アケミは全身の血が沸き立つのを感じた。

が、よくよく見てみると、それは、生身の女性ではなかった。
かと言って、知識の中にあるような空気人形というわけでもない。
それはいわゆるアニメのキャラクターがプリントされた、抱き枕であった。
プリントされている女性は艶めかしく裸体を伸ばし、頬を赤らめている。

そうか、生身の女ではなく、非現実の女に負けたのか、とアケミは肩を落とした。
しかし、逆に言えば、まだまだ自分には戦う余地はある、と言い聞かせるように頷く。

と。

(動いた?)
目の錯覚かもしれない。狭い隙間にめをこらしているから、きっと目が疲れたのだ。
(!?)
そんな予想とは裏腹に、良く見れば抱き枕は静かにそして微かに上下運動をしている。
まるで、生きて呼吸しているかのように。

そして次の瞬間、抱き枕はモゴモゴモゴモゴっと動き、のたうった。
同じ姿勢で同じポーズのキャラクターが跳ねる。
その異様な光景にアケミは金縛りにあったように動けなかった。
夢ではない。
だがしかし現実に抱き枕は狂おしくウネっているではないか。
ウネる度に何かが飛び散っている。
枕の羽根ではない、液体?
そう言えば、マクラは全体がしっとりと濡れている。
何故?

やがてマクラは動きを止めた。
だが見守るアケミの前で、本来であれば中に枕本体を入れるためであろうジッパーが、ひとりでにジジジジジと開く。

「むぐっぷぅ」

デロリと粘液を全身に纏い、ヌラヌラと陽光を跳ね返す裸体。
今まさしく、アケミの彼氏は、抱き枕の中からモゾモゾと誕生したのだ。

「あばぁ」

自身の液体でズルリとしながらも、彼氏の全身が現れる。
そしてそのままオギンオギンになっていた股間を、ぬくっちゅうぬくっちゅうと自身の抜け殻である抱き枕カバーに擦り付け始めたではないか。

「あ、あ、あ、なのはママ!なのはママぁぁぁぁっ!」

きっとキャラクターの名前なのだろう。
嬌声を高らかに響かせ、彼氏は股間を激しくグラインドさせる。
それでけでなく、ヌルヌルの全身を上から下まで滑らせ、キャラクターに余すところなく擦り付ける。

蒸し暑い。

ぐねぐねもぞもぞと蠢く肢体。
ぬらぬらと光る肌。
嫌悪感に満ち満ちたソレは既に人ではなく、虫のソレであった。

「ゴミ虫…」
朦朧とする意識の中、アケミはポツリと呟いた。




ラノベ初めて物語 「抱き枕出産ローションプレイの初めて 編」 終

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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

ライトノベル『茶羽根荘のゴミ虫な彼氏』

と記しておけば、鷹尾が書いてくれると聞いて。

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 本・雑誌

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